茶がゆ

熊野の「おかゆ」は茶色い粥

 田辺市のある和歌山県南部や、十津川村のある奈良県南部で古くから食べられている茶がゆ。地元では「おかいさん」と親しみをこめた名前で呼ばれる、日常食である。
 それゆえ、当地では「おかゆ」というと「おかいさん(茶がゆ)のこと」というのが常識であり、白いおかゆにはなじみがない。あまりにも普通の家庭食のため、当地域特有の食文化であることに気づいていないほどである。

厳しい自然条件から生まれた茶がゆ

 熊野の地は多雨気候ゆえ、谷は深く、耕地が少ない。少ない米を少しでもおいしく食べるために生まれたのが、ほうじ茶で炊いた茶がゆ。かつては各家庭で茶の木を植えており、自家製のほうじ茶で茶がゆを炊いていた。今でも茶の栽培は続いており、本宮などでは手作りのほうじ茶が販売されている。

熊野の食文化「茶がゆ」

 時代が変わっても、そのおいしさ、食べやすさから当地では常食となっている。特に梅干や素朴な漬物と一緒に食べると格別である。
 温泉水で炊いた温泉茶がゆも、温泉地の旅館・民宿などで供するところもある名物のひとつである。
 初めてだとその見かけにびっくりするかもしれないが、ぜひその香ばしく体にやさしい郷土食を食べてほしい。